本棚に本があふれてる

読書の記録と本にまつわるあれこれ

思い切って踏み出す一歩 ~『あるきだした小さな木』

(この記事は2020年9月に書いたものを書き直しました。)

 

何か新しいことをやるとき、

すぐに始められる人もいれば、なかなか行動に移せない人もいますよね。

 

わたしはどちらかというと後者のタイプで

ブログを始めようと思ってから開設するまでに、まる一年かかりました。

ブログ以外でも、何かやってみたいことがあっても

「いまさら始めても遅いよね」とか

「うまくいくかどうかもわからないし」と、できない言い訳を先に考えるタイプ。

 

 

そんなわたしに、エールを送ってくれるのがこの本。

  

 

ちいさなちびっこの木は森の中でパパやママの木と平和に暮らしていました。

ある日「にんげん」の男の子に出会ったちびっこの木は、

人間と一緒に暮らしてみたいと思います。

そして、毎晩のように体をゆすり続けたちびっこの木は、

ある夜とうとう地面から抜け出して歩き出すのです!

歩けるようになって喜ぶちびっこの木の姿が本当にかわいらしいです。

いかにもフランス風な、おしゃれで色彩豊かな挿絵も素敵です。

 

 

 

 小学生くらいの時に初めて読んだときは、

木が歩いて人間とおしゃべりできるなんて面白い、程度の感想しか持ちませんでしたが

大人になってふと読み直したときに心に残った文章がありました。

 

仲良しのすずめに、「木はあるけない」と言われたちびっこの木は考えます。

 

 でも ほんとうに

 

木は あるけないかしら。

 

それは いままで、

ためしにあるこうとした 木が、

一本も なかったからです。

ほんとうに いっしょうけんめいに

あるこうと おもった 木が、

一本も なかったからです。

 

(『あるきだした小さな木』 テルマ=ボルクマン作 花輪莞爾訳 

 偕成社) 

 

地面に何百本も根を絡ませた木が、歩き出すことができるなら。

本当に本気になれば、人が一歩踏み出すなんてたやすいはず…。

と思えたのでした。

 

 

 さて、

歩き出したちびっこの木はふるさとの森から遠くへ旅をし、

沢山の物を見て沢山の人に出会います。

時には切られそうになったり、引き抜かれて庭に植えられてしまったり。

いろいろな冒険を切り抜けたちびっこの木は、最後に再び地面に根を下ろします。

「大きな おとなの 木」になったちびっこの木には、

小鳥が枝に止まって体を休め、人間が木陰で涼み、

風が葉っぱをゆすって美しい音楽を奏でていくのでした。

 

 

一歩踏み出した先にわたしには何が待っているのか、今は楽しみにしています。