本棚に本があふれてる

読書の記録と本にまつわるあれこれ

ねずみ年は終わったけれどねずみのお話① 『冒険者たち』

本当は干支つながりで去年のうちに書きかけていました。

もう4月にもなってなんだか間が抜けてしまいましたが、

今週のお題】 「下書き放出!」に便乗しまして。

 

 ねずみが主人公の話って沢山あります。

すぐに思い付くだけでも、

『いなかのねずみと町のねずみ』

ぐりとぐら

『14ひきのひっこし』

『ねずみくんのチョッキ』

などなど…。

 

食べ物を食い荒らしたり、病原菌を媒介したりといった害獣のイメージもある一方で

可愛い、賢い、器用などといったイメージもありますね。

昔から人間の身近にいた、親しみのある生き物だからかもしれません。

 

そんな数あるねずみのお話の中でも好きなのは

 

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫044)

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫044)

  • 作者:斎藤 惇夫
  • 発売日: 2000/06/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  

ドブネズミのガンバは、友達のマンプクに誘われて港に遊びにいったのをきっかけに、

15匹の仲間と一緒に島のねずみを助けに行くことに。

生まれて初めて見る海、ねずみの天敵イタチとの闘い、そして淡い恋。

命がけでイタチと戦うガンバ達の運命は…?

 

 

小さなねずみたちの話ではありますが、

平凡な男が数々の苦難を乗り越えて英雄となり、仲間と共に新たな旅に出るーという

おとぎ話にありそうな筋立てに、

勇気!友情!冒険!自由!夢とロマン!戦い!裏切り!団結!

などなどてんこ盛りの、非常に男くさいお話です。

生き生きとした躍動感や、楽天的な、前向きなパワーを感じます。

 

ねずみならではの器用さや身体能力もうまくいかされていて、

ロープを伝って船に乗り込んだり、齧ったり、穴を掘ったり、

泳いだり(ねずみって泳げるんですね)と大活躍。

頭脳派のガクシャ、肉体派のヨイショ、俊足イダテン、クールなイカサマなど、

15匹の仲間たちの性格や能力もそれぞれ個性的です。

 

 

 そして敵役のイタチのリーダー、ノロイがとても恐ろしいのです。

白い毛並みに優美なしぐさ、しかし狡猾なノロイは、

巧みなマインドコントロールで、ねずみたちを追い詰めていきます。

それぞれの個性を生かした戦いぶりで大健闘するも、

身体の小さなねずみたちはだんだん劣勢になってしまいます。

もうだめかと思ったその時に…?

 

ねずみとイタチの戦いというストーリーと並行して、主人公ガンバの成長も

魅力的です。

最初のうちは、その場のノリで「島のねずみを助けてやろう」と言い出したあげく、

 引っ込みがつかなくなって「俺一人でも行く」と強がって見せたり、

経験豊富な仲間のねずみたちについていけば何とかなるだろう、と思ったり、

ただの気のいいあんちゃんという感じは否めません。

 

けれどもガンバと行動を共にしていくうちに、仲間のねずみたちは(そして読者の

私たちも)行き当たりばったりなガンバの行動に少々あきれながらも、

持ち前の正義感と行動力、そして困っている者を見たらだれであろうと手を差し伸べる

優しさをもつガンバをリーダーとして認めるようになっていきます。

自分は決してそんな立派なねずみじゃない、と弱音を吐きながらも、

仲間たちを、愛する者を、そして自分たちの尊厳を守るために

勝ち目のない戦いに身を投じていくガンバはとてもカッコいいと思います。

 

戦いを終えたガンバは、仲間たちと一緒に旅に出ることになります。

さあゆこう仲間たちよ

住みなれたこの地をあとに

曙光さす地平線のかなたへ…

 

物語中に何度も歌われた歌と共に。

ガンバと仲間たちの冒険は、まだまだ続くことでしょう。

 

 

 

 一気に読み終えてしまう面白い物語の魅力を更に増しているのが

薮内正幸さんの挿絵です。

薮内さんといえば、『どうぶつのおやこ』『どうぶつのおかあさん』

などで知られる絵本作家です。

とても緻密で本物そっくり、だけど写真にはない温かみを感じさせる絵ですね。

冒険者たち』の挿絵をみても、写真のように精密なのに一匹一匹の特徴や表情まで

描きわけているのには驚きます。

作者の描くストーリーの面白さはもちろんですが、

薮内さんの挿絵のもたらす躍動感、臨場感が、この物語をファンタジーでありながら

リアルなものにしているのだと思います。

(だって襲い掛かってくるノロイの絵とか本当に怖いですよ)

 

冒険者たち』には前編にあたる『グリックの冒険』があって、

ここではガンバはちょい役です。 

 

グリックの冒険 (岩波少年文庫)

グリックの冒険 (岩波少年文庫)

  • 作者:斎藤 惇夫
  • 発売日: 2000/07/18
  • メディア: 単行本
 

 

 

 ところがガンバのお話をもっと書いてほしい、

という読者たちの声で続きを書いたのが『冒険者たち』とのことです。

 

後編にあたる『ガンバとカワウソの冒険

が続いて3部作となっています。こちらでもガンバは大活躍します。

ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)

ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)

  • 作者:斎藤 惇夫
  • 発売日: 2000/09/18
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

 ちなみに、

1975年にテレビアニメ化されていたようですがわたしは残念ながら見ておらず。

2015年には映画化もされています。

絵はとてもきれいですがちょっとねずみたちを擬人化しすぎな気がするし、

ノロイもツルツルしていてイタチっぽくないかな…と個人的には思います。

 

 

  

GAMBA ガンバと仲間たち

GAMBA ガンバと仲間たち

  • メディア: Prime Video