本棚に本があふれてる

読書の記録と本にまつわるあれこれ

おもしろうてやがて悲しき~『夏目友人帳』

今週のお題、「一気読みした漫画」といえばこれ。

 

 

存在を知ったのは数年前にアニメの再放送を見てからです。

まず子供が夢中になり「これお母さん絶対好きなやつだから!はまるから!」と

言われて見てみたら。おぬし、母の趣味をよくわかっておるな…。

その時点で20巻くらいまで出ていたので即大人買い、即一気読み。

今にして思えば、存在を知ったのが遅かったゆえに、

一気読みの醍醐味を味わえたとも言えますね。

 

小さい頃から時々変なものを見た。

他の人には見えないらしいそれらはおそらく

妖怪と呼ばれるものの類。 

(『夏目友人帳』 緑川ゆき 花とゆめCOMICS より)

 

妖が見えてしまう力を持った天涯孤独の少年夏目が、

祖母レイコの唯一の遺品である「友人帳」をめぐって

不思議な出来事の数々に巻き込まれ、その中で成長していく物語。

 

特殊な力を周囲に理解してもらえず、辛く淋しい思いをしてきた夏目ですが、

でもだからこそ弱いものには人一倍優しくてつい手を差し伸べてしまう。

とても繊細でまっすぐで、しかもイケメンで、ちょっとツンデレ

好きにならずにはいられない、少女まんが王道の「王子キャラ」ですよ!!

 

 妖怪というと恐ろしいもの、気味の悪いもの、と思ってしまいがち。

もちろん人を食う悪鬼のような妖や、

何かの形ですらない、雲のような霧のような悪意に満ちた妖も出てきますが

小鳥やウサギやねずみのような小動物系、

モフモフだったりお目目ぱっちりだったりのゆるキャラ系、

人の形をとっているもの、近寄りがたく気高く美しい神のような存在…

いたずらだったりお茶目だったり臆病だったり、

何か大事な任務を帯びていたり、大事なものを守り続けていたり、

業にしばられて、誰かに操られて、苦しんでいたり。

人間の善悪という分類には収まりきらない、様々な妖たちが登場します。

作者の想像力とそれを表現する画力もとても魅力的。

 

お互いに住む世界が違い、生きる時間も理も違い、

本来なら決して交わることのない妖と人。

それでも何かのきっかけで交わってしまったとき、

そこに生まれるのは憎悪?憐み?友情?愛情?

 

いろいろな妖と夏目(と夏目の周りの人たち)との関わり合いが、

時には恐ろしく、時にはコミカルに描かれて、

毎回ハラハラドキドキしたりクスッとさせられたり、

それでも最後はなぜか涙があふれて止まらなくなって、

でもその後で心が浄化されたようにポッと温かくなる気がするのです。

 

夏目はなぜ妖が見えるのか?

夏目の祖母レイコの過去とは?

夏目とニャンコ先生、名取、的場との関係は?など、

いくつもの謎が新たな謎を呼んでいきます。

全ての謎を明らかにしてほしいような、でもそうするとお話が終わってしまうから

いつまでも夏目と妖たちの世界を語り続けてほしいような、

ああ、でも人には「いつまでも」ってないんだよな…。

面白いけど、ちょっと切ない。そんなお話です。