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読書の記録と本にまつわるあれこれ

好きな長編ファンタジー10選

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

 

物語の世界にたっぷり浸れる長編ファンタジーを10個選んでみました。

(どの順番で紹介しようか悩んだあげく、自分が読んだ順で落ち着きました。)

映像化されているものも多いので、そちらの感想も一言書きました。

 

1.『ドリトル先生』シリーズ

2.『コロボックル物語

3.『ナルニア国物語

4.『指輪物語

5.『ハリーポッター』シリーズ

6.『守り人』シリーズ

7.『氷と炎の歌

8.『十二国記

9.『ガフールの勇者たち』

10.『テメレア戦記』

 

 

1.『ドリトル先生』シリーズ 

ヒュー・ロフティング  井伏鱒二訳 岩波書店

お人好しの医者、ドリトル先生は大の動物好き。動物好きが高じて患者が寄り付かなく

なってしまいます。そこでペットのオウムから動物の言葉を教わって獣医になると、国

中から沢山の動物たちが診てもらおうと押しかけて大繁盛。ある日一羽のツバメがやっ

てきて…。

動物と話ができたらいいな、いろいろな国に行ってみたいな。誰もが抱く幼いころの

夢をそのまま形にしたような物語。浮世離れしたドリトル先生とそれを一生懸命支える

動物たちがとても可愛らしく、更には奇妙奇天烈な珍獣に、「ここまで行っちゃう

の?」の奇想天外なストーリー。夢中になって読みました。

作者自身の描いた挿絵がまたほのぼのとしていてとても素敵なんですよね。

 

いろいろ映像化されているようですが、ロバート・ダウニー・ジュニア主演の『ドクタ

ー・ドリトル』は見ました。原作と違う部分もあるけれど、先生の浮世離れ感や動物た

ちの奮闘ぶりはおんなじで懐かしく楽しかったです。

 

 

2.『コロボックル物語 佐藤さとる 講談社

主人公の「ぼく」はある日偶然小山をみつけて秘密の隠れ家にします。そこには「こぼ

しさま」というふしぎな小人の言い伝えがありました。ある時、一緒に遊んでいた女の

子が川に靴を落としてしまい、追いかけたぼくが見たものは…。

人間がコロボックルと出会い友情を育んでいく物語。日本のファンタジーを代表する名

作だと思います。コロボックルはきっといると信じていた子どもはわたしを含め沢山い

るはずです。

舞台は昭和期の日本のごく普通の郊外の町。登場人物もごく普通のひとたち。異世界

の移動もなければ魔法もないありふれた日常もファンタジーの舞台になる。ファンタジ

ーの世界はわたしたちのすぐそばにある、信じればそこにある、と作者は伝えているよ

うに思います。

コロボックル一人一人の人物造形はもちろんのこと、社会の仕組みや歴史なども細かく

設定された圧倒的なリアリティと破綻のない世界観、そして村上勉さんによる精緻な挿

絵の力で、「本当に見てきたかのように」語られる世界は何度でも訪れたくなる魅力に

あふれています。

 

 

3.『ナルニア国物語 C.S.ルイス 瀬田貞二訳 岩波書店 

暗いクローゼットを抜けたらそこは別世界だった…。

あまりにも有名なオープニング。イギリスから迷い込んだ4人のきょうだいが「ナルニ

ア国」の王、女王となり、長い間平和な治世が続きますが…。

神話や伝説に出てくるさまざまな生き物が登場したり、異国情緒あふれる物語が展開し

たり、命がけの冒険があったり、ハラハラドキドキの連続です。各巻で時代や登場人物

が異なりながらも一つの大きな物語が紡がれていきます。

実は作者が子どもたちにキリスト教を易しく教えるために書いた作品だそうで、

確かに「ナルニアの存在を信じない者はもう戻ることができない」とか、「たとえ異教

の神を信じても、それがまことの信心ならばそれは異教の神ではなくアスランを信じる

ことになる」という表現はなるほどな、と思います。

そして子ども向けの物語としてはかなりショッキングな終わり方もキリスト教的な魂の

救済ということになるのでしょうか。

 

映画は風景がとても綺麗だったし、子どもたちも適役だったのに、第3章までで終わっ

てしまったのが残念です。

 

 

4.『指輪物語』 J.R.R.トールキン  瀬田貞二訳 評論社 

20世紀最大にして最高のファンタジーと言って過言ではないと思います。

世界を悪から守るため、力の指輪を滅びの亀裂に捨てに行く旅に出る9人の仲間。

人間、エルフ、ドワーフ、魔法使い、そしてホビット。命がけの旅を続ける彼らに次々

と試練が降りかかる。指輪の行方は?彼らは世界を守り抜けるのか…?

とにかく圧倒的なスケールの大きさ、北欧やケルトの神話を下敷きにした完璧な世界観

(作者は物語の中で話される言葉まで創作しています)が素晴らしいです。

自分の大切な人や国を守るために立ち上がる一人一人の勇気ある行動が積み重なって一

つの大きなことを成し遂げるストーリーに感動する一方で、9人の旅の仲間の功績は長

く語り継がれはするけれど、悠久の時間の中ではそれも一つのエピソードにすぎず、そ

の後も時は流れ命は巡っていく…そんな無常観も感じます。

 

絶対映像化できないと思っていたのにピータージャクソン監督がやってくれました!

とにかく素晴らしかった。ラストのイライジャ・ウッドの笑顔にはやられました。

 

 

5.『ハリー・ポッター』シリーズ 

J.K.ローリング 松岡祐子訳 静山社

社会現象にもなった「ハリポタ」シリーズ。

両親を幼い時に亡くし、親戚の家で冷遇されていたハリーは、11歳の誕生日に自分が魔

法使いだと知らされ魔法魔術学校に通うことになります。

友達や先生に囲まれて楽しい学校生活を過ごせると思いきや、何故か周りに起こる事件

の数々。徐々に明かされる自分の宿命。出会いと別れ。そして運命の対決の結果は…?

1巻から7巻までの物語で、11歳の子どもから17歳の青年へと大きく成長していくハリー

が描かれます。原文がそうなのか、訳者の工夫なのかわかりませんが、最初は子どもっ

ぽい感じの筆致が次第に(内容もシリアスになってくるのに合わせて)落ち着いた表現

になってくるところもハリーの成長を感じさせて面白いと思いました。

そしてなんといってもクィディッチをはじめとする魔法界の世界観や呪文の数々、重苦

しいストーリーをつかの間忘れさせてくれるちょっととぼけた登場人物たちもとても魅

力的です。

 

映画は、同じキャストで最後まで撮れ、映画の中でもハリーたちの成長を感じることが

できて良かったです。魔法のシーンは映像で見るととっても「魔法ぽくて」楽しいです

ね。

 

 

6.『守り人』シリーズ 上橋菜穂子 偕成社

日本の、というよりもアジアのファンタジー。日本や周辺のアジア諸国を彷彿とさせる

世界。女用心棒のバルサはひょんなことから皇子チャグムを命がけで守りぬくことにな

る。バルサとチャグムの運命は…?

作者は物語を書く人になりたくて文化人類学を学んだそうですが、風俗、言葉、神話伝

説など、実在の国を連想させながらも他にどこにもない世界観を作り上げているのはさ

すがだなぁと思います。バルサとチャグムの偶然の出会いから、どんどん広い世界(バ

ルサたちの世界での「異世界」も含めて)へ話が展開していくスケールの大きさには

圧倒されます。そして本の中の話が終わっても、どこかで登場人物たちがちゃんとその

後の人生を生きているような時間的な広がりも感じます。

また、上橋菜穂子さんの作品は市井の人への暖かいまなざしを感じます。国は誰のため

にあるのか、政治はなんのためにあるのか、そこに暮らす人々が平和に暮らすためでは

ないのか…そんなことも考えさせられます。

 

アニメ版はバルサの絵と声優さんの雰囲気が好きでしたが時間的に見る余裕がなくて途

中で挫折し、それっきりになってしまいました。

ドラマ版は綾瀬はるかさんはとても良かったのですが、できれば色々な国の俳優さんを

使って、海外ロケもガンガンやって、多国籍感と空間的な広がりを演出してほしかった

なぁ…。

 

 

7.『氷と炎の歌』 

ジョージ・R・R・マーティン  岡部宏之/酒井昭伸訳 早川書房

もはや『ゲースロ』と言ったほうがわかりやすい感がありますが。

中世イギリスをイメージさせる「ウェスタロス」を舞台に、王座をめぐる争いを描くダ

ークファンタジー。血で血を洗う貴族たちの権力争い、時には身内ですら容赦なく切り

捨てる。きれいごとでは済まない壮絶な人間ドラマは本当の歴史もそうだったのだろう

と逆にリアリティを感じさせるのですが、更にそこへ北の国の「異形」やドラゴンや魔

法などが絡んでくるともう何が何だか。怖いけど惹きつけられて目が離せないし、この

混沌とした状態をどう終わらせるのか先が知りたくて仕方ないです。

 

こちらのドラマ版は多国籍感と空間的な広がりはバッチリ!迫力満点で素晴らしい。

でも本よりもドラマが先に終わってしまったんですよね。本で読んだところまで見て、

続きは我慢しているのですが、いつまで待てるかしら…。

 

 

8.『十二国記』 小野不由美 新潮社

幾何学的に並んだ12の国、不老不死の王、人の形をとる神獣麒麟。王の治世が行き届か

ない国では国土が荒れ果て妖魔が跋扈し、天によって次の王が選ばれる。平凡な女子高

校生陽子は、ある日突然「あなたが女王です」と告げられてそんな摩訶不思議な世界に

連れてこられてしまった…。

古代中国をイメージさせる一種独特の世界観が面白いです。ものすごく荒唐無稽ではあ

りますが、大勢の登場人物の個性が見事に書き分けられていることもあり不思議なリア

リティがあります。今までの価値観が全く通じない世界に放り込まれてしまった主人公

が傷つきながらも自分の居場所を見つけるまでの過程は感動的です。現実の社会を生き

ていくのにも必要だと思われるような前向きな考え方が随所にちりばめられ、元気が出

ます。

 

アニメ化されているそうですが未見です。

 

 

9.『ガフールの勇者たち』 

キャスリン・ラスキー 食野雅子訳 角川書店

人間(=「異生物」)がはるか昔に滅び去り、フクロウが支配する世界の物語。

孤児になったメンフクロウがフクロウの伝説の国を探して仲間とともに旅に出ます。

可愛い鳥さんのフワフワしたお話と思うなかれ。謎のフクロウ孤児院、種族間の争い、

兄弟の確執、出生の秘密、そして伝説の国は本当にあるのか? ハードな展開に目が離

せなくなります。実は子どもが先に読んで夢中になり、わたしに教えてくれました。

 

映画は、原作のエピソードをぎゅっつとまとめた、スピード感のある展開です。美しい

3D映像により、フクロウの種類ごとの大きさや羽の色の違いとか、飛ぶときの翼の動

きの美しさとか、生きものとしてのフクロウの魅力も堪能できます。

 

 

10.『テメレア戦記』 ナオミ・ノヴィク  ヴィレッジブックス

主人公ローレンスはひょんなことからドラゴンの「担い手」となり、やがてそのドラゴ

ン、テメレアと厚い友情で結ばれていきます。待ち受ける戦闘と冒険の数々。二人の運

命は・・・?

ナポレオン戦争時代のヨーロッパにドラゴンがいるというパラレルワールド的な設定

(ナポレオンやネルソン提督などの歴史上の人物も出てくる)が面白いです。

種族最後の生き残りが数匹ひっそりと暮らしていて、人間を敵視していて、魔法使いや

ごく一部の選ばれた人間だけが心をかわすことができる…。そんなよくあるドラゴン像

が良い意味で裏切られます。ドラゴンと人が一体となって繰り広げる戦闘シーンは迫力

満点でカッコいい!

全9巻で完結しているそうなのですが、日本語訳はまだ6巻までしか出ていないので続き

が非常に楽しみです。