本棚に本があふれてる

読書の記録と本にまつわるあれこれ

『児童文学の中の家』

子どものころ、外国の物語に出てくる家が憧れでした。100も部屋のある大きなお屋敷

ってどんなだろう、塔のあるお城って?屋根裏部屋って?そして天蓋付きのベッドや煙

突のついた暖炉、ランプに揺り椅子。挿絵を見ながらあれこれ想像したものです。なの

で、この本を見つけたとき迷わず手に取りました。

 

 

画家である作者が選んだ27の児童文学のワンシーンを、建物や家具の挿絵を中心に紹介

しています。『大きな森の小さな家』『秘密の花園』『やかまし村の子どもたち』な

ど、わたしも大好きで読みふけっていたお話ばかりなのがまずとても嬉しい。

色鉛筆で描いたような温かみのある優しい色合いの絵がとても素敵で眺めているだけで

も楽しいし、物語のあらすじを読めば「そうそう、そうだった」と忘れかけていた記憶

がよみがえります。

それぞれの物語の舞台となった場所の気候風土、時代による建築様式や家具調度品の

特徴、建物の見取り図、物語の時代背景なども丁寧に説明されています。本当に登場人

物たちの生活をのぞき見しているような気分になりました。

「こんな住み心地のよさそうな家だから、こんな楽しい出来事が起きるのね」「こんな

寒々しいお城では、悲劇が起こるのも無理はない」「こんな広い邸宅だから、見つから

ずに作業ができたのね」などなど、家と物語との関係性を改めて考えると一層興味深

く、また読み直したい本が沢山できてしまいました(たぶん27作、全て読み直してしま

うかも)。

イギリスチューダー朝のハーフティンバー様式の田舎家、ヴィクトリア朝の美しい邸

宅、スウェーデンの民家とお城、アメリカ開拓時代の丸太小屋、スイスの山小屋、ロシ

アの宮殿、さらには豪華寝台列車まで、ちょっとした世界旅行の趣も味わえるのがまた

楽しい一冊です。