フィンランドの作家トーベ・ヤンソンが生み出した「ムーミントロール」のお話。
テーマパークやカフェもできて大人気ですね。
『ムーミン谷の仲間たち』は、ムーミン谷の四季を通じて、ムーミン一家やその周りの
人々の暮らしを描いた9つの短編集です。どの短編もしみじみ味わい深いお話ですが
(わたしは一つ選ぶなら「しずかなのがすきなヘムレンさん」が好きです)、
巻末にあるのが「もみの木」というクリスマスのお話です。
いつも仲睦まじいムーミン一家。
クリスマスだって一家そろって楽しく過ごすのだろう、と思いますよね。
ムーミントロールとスノークのおじょうさんが綺麗に飾り付けたツリーの下で、ムーミ
ンママが腕によりをかけてこしらえたご馳走を囲み、プレゼントを交換して(ヘムレン
さんのプレゼントは切手シートで決まりでしょう)、プレゼントをめぐってミィとス
ニフの間でちょっとしたいさかいがあって、スナフキンがハーモニカを吹く。家の外は
美しい雪景色…。こんな場面を勝手に想像していました。
さて、「もみの木」で描かれるムーミン谷のクリスマスの情景は…。
上に書いたイメージとはかなり違いました(なぜなのかは、ムーミントロールの生態に
詳しい方ならすぐわかるはず。冬ですからね…。)
クリスマスの準備に奔走するムーミンたちの行動はちょっと滑稽ですが、結果的に大き
な贈り物をしたことになり、知らず知らずのうちにクリスマスの本質をついているので
はないでしょうか。それに気づくと、今度はヘムルさんやガフサ夫人の行動の方が滑稽
でうわべだけに見えてきます。
さいごは心穏やかに平和な気持ちでクリスマスを迎えることができたムーミン一家に、
そっと「おやすみなさい」とつぶやいて本を閉じました。