本棚に本があふれてる

読書の記録と本にまつわるあれこれ

うさぎ年の最後にうさぎのお話『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』

2023年ももうすぐ終わり。今年はうさぎのように軽やかにジャンプする年にしたいと思っていたのですが、現実は「軽やか」とは程遠い状況でした(涙)。一度はブログの継続を諦めて、読書記録のアプリに切り替えていたのです。これはこれでとっても便利。でも今まで出会った沢山の素敵な本たちへの熱い思いをしつこく長々と綴るには、やっぱりブログも捨てがたい…。そんなこんなで迷いながらも、ぼちぼちながらも、もう少しブログも続けてみることにしました。

 

さて、うさぎといえばこの二大キャラクターが真っ先に浮かびますが

 

 

(わたしの中では「ミッフィー」というよりは「うさこちゃん」なので、あえてこちらを)

 

どっちも大好きなので、語りだしたらきりがないですけれど、今年最後に語りたいうさぎのお話はこちら。

『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』 

リチャード・アダムス 神宮輝夫訳 評論社

1973年にカーネギー賞とガーディアン賞をダブル受賞、1978年にはアニメ映画化もされています(日本公開は1980年)。

 

平和に暮らしていたヘイズルは、弟ファイバーの予言に従い仲間とともに村を出て新天地を探すことに。外には危険がいっぱい。そんなときに出会った見慣れないうさぎたち…ヘイズルたちは安住の地を見つけられるのか?

 

作者アダムスが子どもに語って聞かせたお話がもとになっているそうです。イギリスの児童文学にはこういう成り立ちの話が多い(しかも名作が多い!)ですよね。

 

この物語のうさぎはとことんリアルな生態に基づいて描写されているので(当然服なんか着ていない)、擬人化されたふわふわうさちゃんの話しか読んだことのなかった中学生には非常に衝撃的でした。え、本物の野生のうさぎってこんななの?噛む?引き裂く?ええええ!…と。でもそのリアリティに圧倒されてページをめくる手が止まらなくなります。またその一方でうさぎの世界の神話伝承が所々に挿入されてくるのですが、そのファンタジー的側面がまた一層物語世界の「本物らしさ」を増してどんどん引き込まれていきます。それぞれのうさぎも個性豊かに描き分けられていて、あーピグウィグ好きだったわー、とここまでは昔読んだ時も思ったこと。

 

うさぎ年だから、という理由で40数年ぶり(!)に再読してみて感じたのは、「自由とは?生きるとは?」という大きな問いかけでした。

 

ヘイズルたちが旅の途中で出会ったうさぎの村は食べるものにも困らず、安全で文化的な暮らしをしています。また別のうさぎの村は非常によく管理されて栄えています。ではそこに暮らすうさぎたちは本当に幸せなのか?隠された真実から目を背けてかりそめの平和に満足していないか?現実のわたしたちの社会と照らし合わせて考え込んでしまいました。

また、新天地を見つけるのが本当のゴールではなかったということに再読して改めて気づきました(むしろそこには意外にあっさりと到着してる)。けれどそこでめでたしめでたし…にはならず、ではこの群れを今後も継続させていくにはどうしたらいいのか、どういう暮らし方が理想なのか、そのためには大きな犠牲もいとわない、というところまで話が続くところがとことんリアルだと思います。生きるとは命をつなぐこと、自分だけの命ではない、次の世代に平和な社会を残していかなくてはいけない。わたしも含めこんなシンプルなことを忘れてしまっている人間が多いのではないかと考えさせられました。

 

 

余談ですが、今回再読して、この話『冒険者たち』に似ていると思ったのです。小さな動物が旅に出て幾多の困難を乗り越える。特に思いがけない味方を得るあたりの展開がものすごく似ているなあと。なんと出版年まで同時(1972年)でびっくりしました。ちなみに『川の光』(2007年)もちょっと似ています(『川の光』についてもいつかしつこく熱く語りたい!)。

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