本棚に本があふれてる

読書の記録と本にまつわるあれこれ

『タイムライン』

 先日の記事に関連して、

 

zoee.hatenablog.com

 

ちょっと思い出して観返し(読み返し)た映画と本について。

これもタイムトラベル物です。どんだけ好きなんだかという感じですが。

 

タイムライン (字幕版)

タイムライン (字幕版)

  • 発売日: 2013/05/15
  • メディア: Prime Video
 

 

こちらは現代から14世紀のヨーロッパに時空を移動してしまうお話です。

 

 

 

好きな本は映像化してもらいたい半面、いざ映像化されると

「このシーンは原作と違う、このキャストはイメージに合わない」などいろいろ難癖を

つけてしまう面倒くさい私。

でもこれは、映画を先に見たこともあってか、両方の良いところを楽しめました。

 

 原作は、『ジュラシック・パーク』のマイケルクライトン

最先端の技術を駆使して不可能と思われていた時空移動を成し遂げた実業家がいて、

時期尚早では?という周りの懸念を押し切ってビジネスにしようとするのだけれども、

計画段階では完璧と思われていたプランに次々と想定外のアクシデントが起きて対応

しきれず、どんどんほころびが大きくなってついにはカタストロフィーに…。

「なんだか『ジュラシック・パーク』と似てるかも」という印象です。

 

時空移動の秘密は「量子テクノロジー」という技術で、特に原作ではかなり長くページ

数を割いて説明しています(理数系ダメダメの私にはよく理解できませんでしたが)。

また中世の描写も、言葉、風習、衣服、食べ物など多岐にわたって細かく表現されてい

ます。個人的にこのあたりの年代が好きなので、とても興味深く読みました。

 荒唐無稽なお話ではありますが、こういう細部の描写がきちんとしているので、ぐいぐ

い話に引き込まれてしまうのは、さすがマイケルクライトンだなぁと思います。

 

悪徳実業家に半分騙されるような形でタイムトラベルに送り出される登場人物たちに、

次々と襲い掛かる想定外の危機。

でもメインキャラは、「え、ここで一貫の終わり?」と思いきや、

自分の専門知識や運動能力を駆使して(あるいは持ち前の強運で?)次の章でピンチを

脱出…というパターンが何度か続き、それも『ジュラシック・パーク』と似ています。

原作だとこれでもかとピンチがつづくので、さすがに最後の方は

「主人公は死なず、のパターンね」と思わなくもないですが、スリルは満点です。

 

 

 一方、映画は上映時間の関係上か、もう少しテンポよく進みます。

登場人物を減らしたり、設定や人間関係を変えている箇所がありますが、

逆に頭に入りやすく違和感を感じませんでした。

終盤、戦闘が始まり、タイムリミットが刻々と迫ってくるのにまだメンバーがそろわな

い、このままでは帰れない…というところの緊迫感は映像ならではの迫力があります。

 

映画も原作もいちおうハッピーエンドで、悪役はきちんと報いを受けますが、

原作のほうがジワジワくる怖さがあります。

自分だったら、こんなところに取り残さずに一思いにとどめを刺してくれ!

と言いたくなる終わり方でした。

 

そして、最後に主人公の一人が下す判断。とても重い判断です。

映画の方がラブラブ感があって共感しやすく、冒頭の伏線回収にもなっていて

「おお!そういうことか!」と思えるので満足度は高いかも。

原作では、後に別の登場人物がその判断について、いくら自分で選んだことだとしても

苦労の連続だったのではないか、本当に幸せな人生を過ごせたのだろうか、と思いをは

せる描写があります。

この辺が『夏への扉』に出てきた、「もう一人いたかもしれないタイムトラベラー」と

重なるなあ…と思ったのでした。

 

もう一つ連想したのが中世つながりの『ガウェイン卿と緑の騎士』。

ほんのワンシーンですが、どの場面だったか気になる方がもしいたら、ぜひ原作を読ん

でみてくださいね。